天才性の発掘

あなたはどの才能を伸ばしますか?

絵の才能は遺伝的なもので、一部の限られた天才にだけ開花するものなのでしょうか? それとも、わたしたちのだれもが、優れた芸術家になる可能性を持っているのでしょうか。

近年の研究によると、確かに遺伝が果たす役割は大きいものの、優れた才能は天才だけのもの、という従来の考え方とは少し違った事実が明らかになってきました。

特筆すべきは、それまで芸術にはあまり関心がなく、特に絵が得意なわけでもなかった人たちが、ある日突然、何かしらの脳の変化によって、芸術的才能を獲得してしまうといったケースです。こうした珍しいエピソードが物語るのは、わたしたちはだれでも芸術的才能を秘めているものの、単に抑制されているだけなのではないか、ということです。

脳の損傷、変性、あるいは加齢などで、脳に備わっているブレーキが解除されると、今までなかった芸術的才能を開花させる人たちがいるのです。近年では、脳に磁気を当てることで、意図的に脳の抑制を外して才能を引き出そうとする研究も進められています。

遺伝子や持って生まれた素質など、自分ではどうすることもできないものを嘆くのは、はっきり言って時間を無駄にしています。才能を開花させたいのであれば、今、できることに目を向けましょう。音楽の才能を開花させたい人がまずやるべきことは、音楽をもっと好きになり、音楽に没頭することです。

「音楽の才能の持ち主」と評価される人のほとんどが、練習を練習だと思っていないようです。「ギターに触っていたいから」「音楽を作る時間が自分にとっての息抜きだから」……と、音楽の成功者たちはみな音楽に没頭してしまう性質を持っています。音楽に触れていると脳内がアドレナリンとドーパミンでいっぱいになり、気がづいたら朝まで楽器を弾いていた、という話も珍しくありません。

心理学では集中力が極めて高い没頭状態のことをフローやゾーンと呼んでいます。なぜそこまで没頭できるのか、理由を尋ねれば多くの人が「好きだから」と答えます。

つまり好きだから練習している間に没頭し、没頭すればするほど上達し、ますます音楽を好きになる。結果、自然と練習時間も跳ね上がります。挫折や苦痛を味わっても、「できるようになりたい!」という欲求の方が強いので、途中で諦めることがないのです。

その結果ハードルを乗り越えながら音楽を続け、やがては才能開花へとつながります。遺伝子や素質を変えることはできなくても音楽への愛情を育てることは、もともと音楽が好きな人なら、できるのではないでしょうか。

「才能は集中投資」です。音楽に没頭し、時間と精神を集中投資することが、才能開花への近道だといえます。

場企業に働く社員はほぼ全員が、いい学校を出た、いわゆる頭のいい人材が揃っている。そうした頭のいい人材が多いにもかかわらず、その多くは凡庸な地位で一生を終わり、また多くの大企業で停滞や衰退が始まるのはなぜだろう。その原因を探ると、頭のいい人には特有の弱点がいくつか存在していることが浮上する。

1、偏差値の高い学校を出たことで、そうでない人を見下してしまう傾向がある。
2、思慮深いことが災いし、何かを始める前にその先のことまで考えて臆病になり、ためらい、行動に移せないことが増える。
3、人の力をはかる尺度が「実務遂行の能力」よりも「机上の頭のよさ」に重きを置いてしまう。
4、仕事だけの関係で人と付き合うため、取引先と協力会社のどちらからも慕われない。

ドラッカーが「頭のよさは成果の上限を規定するだけで、成果を出す能力とは関係がない」と指摘していたことを、ここで思い出す。